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[映画]女性の社会的立場が現代よりも格段に低かった1920年代『レディ・マエストロ』

辻井伸行さんの演奏を聴いたのをきっかけにオーケストラにハマっているということもあり『レディ・マエストロ 』を観てきました。(以下、ネタバレありです。)

20世紀に活躍した女性指揮者のパイオニアと言われるアントニア・ブリコの伝記ドラマ。女性は指揮者になれないと言われていた時代に、オランダの移民としてアメリカに暮らし、養子として生きてきた彼女が貧しく音楽学校にも行けない人生からの大逆転を目指す、夢を叶えるヒューマンドラマ。1930年ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者としてデビューを果たし、その後も女性だけのオーケストラを結成するなど、常識を打ち破り続けた女性である。

感想覚え書き

女性の社会的立場が現代よりも格段に低かった1920年代。この頃の時代背景は、1920年8月26日に合衆国憲法の修正案が立案され、11月に初めて女性が全国選挙で投票できるようになった時で、アメリカでは教育を受けられる女性の増加、参政権運動の高まりから「女性の自立」がようやく叫ばれるようになった。そのため劇中に登場する大統領夫人・ファーストレディーは女性の活動に好意的だった。

窮屈なコルセットを脱ぎ捨てたワーキングガールが増えてきた時代であっても、悪い意味でも古典的な音楽業界にとっては「指揮者」は男性の職業であり、女性は指揮者になれないとされていた。クラシック業界は、現在も悪く言えば女性人種差別の温床とも言える状況であり、映画のラストの解説でもあるが、2014年の調査では世界の上位150人の指揮者のリスト中に女性はたった5人だけであり、女性が首席の指揮者を務める音楽団は一つも存在しない。

海外の記事を参照すると、女性指揮者が男性指揮者と全く同じような動きをしても、捉えられ方が全く違い、女性らしくガーリーな動きだと解釈をされてしまうという。「前に男がいると反応が良くなる」、「指揮者台に立つかわいい女の子」という印象を持たれる。

“Conducting is about gesture, and gesture in our world is interpreted differently depending on your gender. If a woman makes a gesture, it is interpreted in a totally different way from a man making the same gesture. Since conducting is all about body language, I think it really is advantageous to be able to speak with women about the reality of how their gestures are interpreted. It's useful to have a safe place to talk about it, where everyone's a woman and we can say, 'That gesture looks girly and it's going to be interpreted in such-and-such a way.'”(参照:How Marin Alsop's classes for young women conductors are changing the face of the profession

性差だけでなく人種や見た目が大きな壁となっており、能力はあっても差別されている事実がある。作中でも会場の支配人がブリコの指揮する演奏を聴きながら「目を瞑っていれば男の指揮のようだ」と発言するシーンがあり、隣にいるロビンは怪訝な表情をするが「男の指揮が優れている」という固定観念は拭えないように思われる。廃れた偏見であることは間違いないのであるが、「女性が男性に指示をする」ということが許されない、みっともないことであるという考えがある。ゆえに、女性の指導者、女性の管理職、女性の教師というのが認めてこられなかった。指揮者だけでなく演奏者も100%男であることが多く、女性だけのオーケストラを結成したことは常識破りであった。

この映画の監督が、ブリコのドキュメンタリー映画を撮ろうと決めた理由が「忘却にあった」という。

私は長い間、オランダ人のアントニア・ブリコの映画を撮りたいと思っていました。1974年、ジュディ・コリンズとジル・ゴッドミローが彼女のドキュメンタリーを製作し、この作品がオスカーにノミネートされた時、老年期を迎えていたアントニアは、再びアメリカで注目を集めることになります。しかしその後、彼女は再び世間から忘れ去られました。残念ながら、忘れ去られてしまうのは、いつの時代においても多くの女性アーティストがたどる道です。私を最も刺激したのは多分この忘却という観点でした。(公式サイトより、監督のメッセージ)

現代もそうであるが、女性が恋とキャリアの両方を得ることは難しい。(この描き方はステレオタイプになってきており、使い古された表現となりつつあるようにも思うが)女性であるがゆえに味わう屈辱や差別も描かれており、自分自身今後の人生について悩んでいる時期でもあるため励みになった。

作中の中で好きだったのが、アントニアを支え続けるナイトクラブのミュージシャンである友人のロビン。自身もトランスジェンダーを公言している俳優らしい。世間に受け入れられていないアウトサイダーの彼と女性という、偏見される二人がともに協力しあいながら時代を切り開こうとする姿は友情以上の美しい関係だったように思う。

劇中の数々の名曲の演奏シーンは楽しみにしていたが、個人的にはいま一つ。ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」は、演奏と指揮ともにバーンスタインを超えられることはあるのだろうか。50年前の映像を鮮明に観ていい音響で楽しめる時代に感謝する。

ガーシュインでもう一つ好きなのが、『三つの前奏曲』。辻井伸行さんの演奏もさることながら、原曲のポップさ、クラシックとジャズを融合したような音色と展開がおもしろくて大好きな作品。

現在はコロナ禍で女性リーダーの活躍がめざましい。忌み嫌われる命令をする男性指導者とは違い、国民に伝わるように統治する姿が褒め称えられている。女性が音楽業界においても特に優れていると言いたいわけではない。私自身が偏見はなしに、男性指揮者のほうが力強くて好きだという気持ちがあった。今回の映画をきっかけに、性別関係なく目に触れてこなかった演奏を見てみたいと思った。

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<参考>

「Modern Ladies」モダン・レディー アメリカ:ビューティビジネスの幕開け

映画「レディ・マエストロ」公式サイト

Bunkamura30周年記念レディ・マエストロ

「女性は指揮者になれない」の常識を打ち破ったパイオニア、アントニア・ブリコの半生を描く映画『レディ・マエストロ』

Why Are There So Few Female Conductors?

How Marin Alsop's classes for young women conductors are changing the face of the profession

シネマトゥデイ『クラシック音楽界の旧弊さに驚きました』

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