悪党たちの大英帝国

[書き起こし]著者からの手紙【 悪党たちの 大英帝国 】著者・君塚 直隆(NHK マイあさラジオ)

著者からの手紙【 悪党たちの 大英帝国 】/著者・君塚 直隆 NHK マイあさラジオ(2020/10/18)の書き起こしです。

16世紀から20世紀にかけてイギリスに繁栄をもたらした7人の為政者について、“悪党”という視点からその功罪を論じた評伝集『悪党たちの大英帝国』

書き起こし

著者からの手紙をお届けします。

お話は『悪党たちの大英帝国』の著者・君塚直隆さんです。この作品は16世紀から20世紀にかけイギリスに繁栄をもたらした7人の為政者に対して”悪党”という視点からその功罪を論じた評伝集です。

君塚直隆さんに伺いました。では君塚さんよろしくお願いします。

君塚直隆氏(以下、「君」):よろしくお願いします

悪党をテーマに書いた理由

NHKアナウンサー(以下、N):君塚さんが今回悪党テーマにイギリスの為政者の功罪を考えたのはなぜなんでしょうか?

君:そうですね。やっぱり特にあのコロナっていう問題が起こってしまって国民はやはり国家に助けを求めたい。そんな時にどういうリーダーシップを発揮できるのかということを国民が見ているところだと思うんですけど、実際にこういうですね、大事件が起こったときに実際にはですね、このリーダーシップを発揮してくれる人というのは言ってみれば悪党みたいな。そういうリーダーのほうがむしろいざというときには発揮してくれるんじゃないか。そのようなことがあってこの本を書いてきました。

著者プロフィール

N:それでは君塚さんのプロフィールを紹介します歴史学者の君塚直隆さんは1961年東京生まれ。上智大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程修了、史学博士です。現在関東学院大学国際文化学部教授をお勤めになっています。

2018年『立憲君主制の現在』でサントリー学芸賞を受賞。その後からを著書に『ビクトリア女王物語』『物語イギリスの歴史』『女王陛下のブルーリボン』などがあります

ヘンリー8世について

ではイギリスに繁栄をもたらした悪党たちについて伺います。

まず16世紀前半、40年近くに渡ってイングランドを率いたヘンリー8世です。君塚さんはヘンリー8世の悪党ぶりを好色漢、残虐性、浪費癖で解説していますが近代へと移行しつつある時代状況を把握する賢明さがあったと評価もしています。

ヘンリー8世は今もなお頻繁に映像化されるなど、イギリスでは人気が衰えないそうですよそれは君塚さんなぜなんでしょうか?

君:はい。ヘンリー8世という人は生涯に奥さんを6人も娶ったと。しかもこのうちですね2人は処刑するし二人は離婚するしというようにエゴイストでとんでもない人に思われるんですが、その中でもドラマ性もやっぱりありますよね。当時このヨーロッパやっぱりまだ宗教、特に教会が非常に大きな力を持ったんですね。ところがそれを国家の下に置く、

君主自身の下に置いてしまうというのはこれはのヘンリー8世が実質本格的にはじめた最初なんですね。

だからイギリスは独立国なんだってことでですね。今でいう主権国家の起源のようなご先祖のような、そういうような政策をどんどん進めていったという点。これは後から考えると非常に先進性があったと言えます。

N:そういう強さという意味で今でも人気があるということなのですね。

君:そうですね。そうやって自分たちの国を守ってくれたんだというような国民からはやはり信頼、あるいは安心感を与えるような、そういう王様だったと言えます。

オリバークロムウェルについて

N:そして17世紀のイングランドを代表する政治家・オリバークロムウェルです。クロムウェルはピューリタン革命と呼ばれる内乱を指導し、国王のチャールズ一定を処刑、王政を廃止しイギリスの歴史の中で異質な共和制を実現しました。

ただ死後2年経って王政復古すると遺体は掘り起こされ放置されるなど、ひどい仕打ちを受けていますが君塚さんはクロムウェルを勇気ある悪党と表現していますね。

君:悪党という表現は実は私自身ではなくてですね、ピューリタン革命のときに王政の側について、クロムウェルが亡くなったあとに王政復古した後に筆頭の大臣としてチャールズ2世っていう王様を支えたクラレンドン卿の実は言葉なんですね。やっぱりクラレンドンは確かにクロムウェルと相対した側だったんです。でもやっぱり勇気ある悪党だったんです。とくにじゃあなんで勇気あるかというと、この時代には絶対にヨーロッパ大陸でも

それからもちろんイングランドでも行われなかったいわゆる王殺し、レジサイドと言いますけれど、国王を殺してそして体制を一変しちゃった。もう全員平等なんだ。それで議会によって治めていくんだという、まったく新しい。ヨーロッパ大陸のほとんど見られなかった、そんな現象です。やっぱりそれくらい大変な勇気があって、他の人では無理でした。

ロイドジョージについて

N:第一次世界対戦の後半にイギリスを率いた主将ロイドジョージはイギリスが誇る経済学者ケインズから「空っぽで中身がない」と評されてい。ます。

君塚さんは戦後処理の失敗、ナチスの接近に加え、愛人問題や栄典売買といった金銭スキャンダルなどを上げロイドジョージの悪党ぶりを解説していますが。読んでみるとそんなに大悪党ではないのではないかというふうに感じました。君塚さんはどうお考えでしょう?

君:はい、あの当時まだまだ第一次大戦が終わるぐらいまではイギリスはジェントルマン階級の人たちがもう議員の大半の人でした。そういう意味で言いますともう、ロイドジョージっていうのはウェールズの田舎者で、叩き上げの大学も出ていません。いわゆる日本でいう中学校ぐらいを出て、受けてまさに自分自身の刻苦勉励でですね、弁護士になって議員なってというぱ当時としても非常に珍しい一人なんですね。弁護士人材もやっぱり弱い者の味方の弁護士だった。だからやがて代議士先生になってがんばって人だったんで異色の存在だったんですね。やはり大問題になって首相を辞任に追い込まれる。その一つのひっかけがいわゆる栄典売買。いわゆる着衣ですとか勲章ですとかそういった栄誉をばら撒いて、それでお金をしこたま貯めて批判を受けたんですが、その貯めたお金っていうのはロイドジョージって人はもともといわゆるジェントルマン出身じゃない。したがって彼が率いている自由党の党の資金ですね。これがほとんどやっぱりもともとない。だからそういうために、だから売買しても彼の懐にはもう一銭たりとも入ってないんですね。全部運営するため。だからか本当に自分自身は無視。私がない。だからやり方が問題あったのかもしれません。

ウィントンチャーチルについて

N:そしてイギリスの悪党の最後を語るのが、第二次世界対戦でドイツを退け、イギリスだけでなく世界をファシズムから救ったウィントンチャーチルです。チャーチルは偉人として評価されることが多いですが、君塚さんはチャーチルのどんなところを悪党と考えていますか?

君:はい、彼はロイドジョージと変わって今度は逆に貴族の中の一族の公爵家の出身ですよね。やっぱり若い頃から贅沢して、大変な宮殿でも生まれている。そんな彼はどうしても帝国主義ですね。やっぱりどうしてもですね同国主義ですね。こういっちゃなんですけど、やっぱりイギリスとか白人だとかそういったものが中心であって、非白人系に対する差別だとかそういったもんごああります。例えば、第二次世界大戦後に首相になった時に、そろそろアフリカに独立権を与えたらどうだという意見に、そんなアフリカ原住民にデモクラシーなんてわかるわけがない。そういうような発言をしちゃうわけなんですよね。ですから非常に帝国主義的な要素は最後まで抜けきれなかったというふうにいえます。

現代の政治家の悪党ぶりに対してそんな匙加減で考えればいいか

N:この作品を教えてくれるのは、政治の能力と道徳的資質は全く別の才能だということです。ただイギリス人だけでなく、日本人も政治家が反道徳的なことをすると非難してしまいますがこの点についてはどんな匙加減で考えれば私たち国民にとって健康的といえるでしょうか。

君:そうですね。もちろん歴史的な人物ってことでいいますと、例えばヘンリー8世の娘だったエリザベス女王1世と同世代ってのは織田信長とか豊臣秀吉なんですね。その彼らだっていろんなことがありましたよね。もう悪党の中の悪党。でもそういう彼らが登場したからこそ、戦国時代っての一つピリオドを打てた。その後家康も悪党ですよね。でもこの悪党だった家康のおかげで天下太平の江戸時代というものも訪れられてですね。

ようやくあの庶民なんかも落ち着いて生活できるようなそんな時代になれたわけです。もうちょっと近現代の話をしますと、やっぱり戦後をやっぱり気づいたのは吉田茂さんだったり佐藤栄作さんだったりしたわけですが、帰らもですねやはり亡くなったあとというのはやっぱり評判良くなかったんですよね。

特に吉田さんの場合なんていうのはなくなっても何十年も経つうちに、やっぱり彼が

いなかったらもう戦後ができなかったと。また佐藤さんだって最近非常に評価がが高くなってますよね。

実際にですね政治を動かしているような政治家たちっていうのはやっぱり結果を残すこと。政策を行って国民のため世界のためにきちんとした成果を収めることなんであって

そういうことを収められそうな人っていうものですね、芽を摘み取っちゃうような、いわゆる重箱の隅を突くようなですね感じで、鵜の目鷹の目この人にスキャンダルがないか、欠点がないかなんていうことですね、あまりにもですね、穿り返すと結局そういった人たちのリーダーシップというものが失われちゃうような、そんな可能性もあるんじゃないか。

ですから私たち国民もですね、もうちょっと応用にですね、政治家たちを見つめて多少の多少のですねあ悪というものは、そういったものはですね、多少大目にに見て、これをしっかりと支えていけるようなそんなような感覚を養ってほしい。

実をいいますと、今日ご紹介いただいたとロイドジョージとチャーチルというのは、喧騒指導者としてやはり国民からものすごい信頼を集めて、そして最後にはストーリーをつかんだ、そういう指導者たちだったんです。もちろん今後戦争とか起こってほしくないですが、ただ今私たちにとっての見えない戦争、コロナとの戦争ですよね。あるいは地球環境問題での戦争。相手があの人間じゃなくて、別のものに対して勝利を掴んでいかないといけない。そういったようなの時のリーダーとはどういうものかってことをちょっと考えて欲しいと思ってこの本を書いた感じなんですね。

N:君塚さんありがとうございましたどうもありがとうございました

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