マイプライベートアイダホ

[映画]俳優の過酷な子供時代と連動するマイプライベートアイダホ

あらすじ

マイプライベートアイダホを観た。路上に立ち、男性に体を売って暮らしている青年マイク。緊張すると突然意識を失ってしまう奇病を持つ彼は、自分を捨てた母親を捜すため、男娼仲間のスコットとともに故郷アイダホへと向かう。愛と友情、それぞれのアイデンティティーを求めた、彼らが旅の果てに見たものは…。

若かりし頃のキアヌリーブス

観終わった後に知った事実として、主人公ストリート・キッドのマイクを演じる俳優リバー・フェニックスで『ジョーカー』でアカデミー賞を受賞したホアキン・フェニックスの兄であるということ。また、この作品がシェイクスピアの『ヘンリー四世』第一部・第二部及び『ヘンリー五世』との関わりがよくわかった一方、シェイクスピアの翻案映画だということだった。フィルムの中の女に焦点を当てるだけでは惜しいので、もうこの際は彼の過去含めスポットを当てたい。

映画を見たきっかけは、キアヌリーブスの名作と評価が高かったことと、ロードムービーが個人的に好きだったからだった。だから想像としては青春映画だったため、幼年好きの中年男性に体を売って身銭を稼ぐ男娼というテーマにはドキッとした。(序盤であからさまではないにしろ、そういうシーンは出てくるので苦手な人もいるとは思う。)同性愛や近親相姦などあれやこれや出てくるけれど、艶かしい映像というよりはショットを組み合わせた詩的な映像で描かれているので、それはすごくいい。とにかく、綺麗な俳優が活きている。

主人公のマイクは、癲癇持ちで記憶の中に生きる母親が原因で睡眠発作を起こしてしまう。映画のなかで何回倒れただろう。その彼を助けるのが、キアヌリーブスが演じる男娼仲間のスコット。彼は市長の息子であり、何不自由なく育ちながらも、見せかけの幸せのない家庭に嫌気がさし、家を飛び出してよくわからない悪い集団に入っていた(ここに出てくるリーダー的な存在の男との関係がヘンリー4世と関係があるようで、今後知りたい)。

ひとまず、キアヌ・リーブスの若い頃の美しさたるや。イケメンなんだ。本当に端正な顔立ちと美しいからだで、若い時ってこういう俳優だったんだと知る。今のキアヌはむさ苦しい感じで、たまに日本に神出鬼没している俳優とイメージに変わりつつあったため笑。

スコットが知り合うイタリア女

ある日、マイクは行方不明の母親を探す決心をし、スコットと共に母親を追い求めてイタリアに行くのだけれど、このイタリアでのマイクへの仕打ちがなかなかひどい。スコットはそこに居たイタリア女と恋に落ちたと言って、抜け抜けと関係を持ってマイクを遠ざけちゃうのよね。さらに本当か嘘なのか父親の証言によると、この母親はかなりの毒親で、殺人犯。浮気をして男と映画を見ていて、銃口を突きつけて逃げていなくなったと、まあ父親も母親も毒親揃いで、こうも悲しい人生で描かれてしまうのかというくらい悲劇的。

この作品で気になるのがイタリアの女なのだけれども、なぜこの田舎女なのかと思ってしまう。確かにかわいいのだけれど、スコットが彼女に惹かれた一番の理由は、彼自身の過去を何一つ知らない点にあると思われる。(この過去を知らないイタリア人に惹かれるというパートを見ると、宇多田ヒカルを連想してしまった。彼女は人間生活をしたいと活動休止してイタリアに渡り自分のことを何一つ知らない年下の男と結婚して、子供を産んで離婚した。何のソースもない推測であるし、他人の生活に口出しをするほど下世話なことはないのだけれども、過去を自分を知らない相手だから惹かれたのだと思う。)

スコットもそうだったと思う。自分のことを知り過ぎた相手からは逃げたくなるものだ。そんなものを求められても困ると。同じようにスコットも友人であり自分に好意のあるリバーフェニックス演じる彼から逃げる。(ここでも思うことは、最近報道されていたキアヌリーブスの熱愛報道。長い間、彼には真剣交際する相手がいなかったというが、これもなんだか親友であったリバーのことが引っかかる。)

リバー・フェニックスの幼少時代

俳優人生と映画作品を連動させるのはどうなのかと、あまり好ましくないように思われるが、リバー・フェニックスの場合には、過酷な子供時代の経験と虐待された子供の危うさはが「演技力」と言い換えられ、大型エンターテインメントハリウッドに搾取された事実がある。この作品もその一つだと言われているため、彼の生涯にもフォーカスしたい。

リバーの悲劇は、実父の育ちと母との出会いから始まっているように思う。(人生が続いていく悲劇ってなんだ。家族って本当にどうしようもないときがある…)父ジョン・リー・ボトムは、典型的な貧しい毒親育ちだった。カリフォルニア州の鉄鋼の町フォンタナで、働きづめでほぼ両親は家におらず、父は心無い人物で、母親が交通事故で重度の脳障害を抱えるとあっさり離婚を言い渡し、他国へ移住。その後ほぼ会うことはなかったという。

母とジョン少年は父にあっさりと見捨てられた。このエピソードは、皮肉にもリバーの弟ホアキン・フェニックスが『ジョーカー』で演じている役に重なる。そしてジョンは13歳で麻薬と飲酒に走り、家出。すぐに連れ戻されたものの、今度は16歳で自身も事故に遭い障害を抱えるようになってしまう。そんな行き場のない怒りを抱えたジョンが、ヒッチハイクで偶然拾ったのが、社会への怒りを爆発させていた年上の女性アーリーンだった。

ここから夫婦二人は、狂信的な世界に入り込み、ヒッピーとして享楽的な薬漬け、フリーセックスのなかで生きていく。この家庭で生まれるのが、リバーフェニックス。彼は幼い頃から、セックスカルト集団において既存の価値観を脱するという名目でセックスを大人から強要、レイプ被害を受けていたらしい。両親はその事実を知らなかったらしいのだが。結局、その後オカルト集団から手を引くものの、その毒親が目指したのがハリウッド。子役として、容姿端麗で演技力も高い彼は評価され、スタンドバイミーで一役大スターとなる。されど、セックス・カルト集団を抜け出しても次なる牙を向いたのがハリウッド世界だった。

搾取するハリウッド

彼は演技力でなく、彼のトラウマから演技を引き出すことを強いられた。この『プライベート・アイダホ』もその一つで、自分の性を買われる男娼役。他にも『モスキート・コースト』はヒッピー家族そのものの話だし、「リトル・ニキータ」も世間と隔絶したスパイの両親の息子役。『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』では神秘主義にハマりこむ青年役といった具合だった。彼の死に様を知ると、このプライベートアイダホで演じているのが彼の半生そのもののようにも見えてくる。生い立ちという辛さを、フェニックス兄弟によるジョーカーとマイプライベートアイダホで作品としてまざまざと見せつけられた。

狂信的な世界から禁欲主義を保ったまま、狂信的な享楽の世界に移動した彼は引き裂かれ、自らに禁じた酒、タバコ、肉を真面目に拒否したまま、セックスに対するねじれた嫌悪感も手放せず、結果クスリに逃げ込んだのだとしたら…。その悲劇は25年前のハロウィーンで起きた。早朝に、ナイトクラブ「ザ・ヴァイパー・ルーム」から、8倍ものヘロイン、コカイン中毒のリバーフェニックスは運び出された。そのときに救急車を呼んだのがホアキン、震えを止めようとしたのが妹、そしてその彼女だったらしい。意識が朦朧とするなかで、歩道で倒れ込みそのまま息を引き取ったという。弟、ホアキンフェニックスの奇行は間違いなく兄の死が関係している。両親こそが、リバーの死の根源だったと言っても過言ではない。

この悲劇を知り、改めてホアキンフェニックスのアカデミー賞受賞式のスピーチを聞くとこみ上げてくるものがある。人生の悲しみを作品に昇華する才能はなかなかマネできない。

追記:ホアキン・フェニックスの第一子誕生。名前はリヴァー

映画『ジョーカー』のオスカー俳優ホアキン・フェニックス(45)と婚約者で『ドラゴン・タトゥーの女』などの女優ルーニー・マーラ(35)に第1子男児が誕生したという。Daily Mail Online などが報じた。(シネマトゥデイ

ホアキン・フェニックスが子どもに、リヴァーと名付けた。兄のことをひきづり続けていた弟ホアキンの思いが伝わってきて泣けた。

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