2017年に欧米を中心に世界の映画祭で上映されたイギリスの短編映画『彼の髪の色』を観た。

彼の髪の色

http://normalscreen.org/blog/colour

舞台は、1960年代中頃のイギリス。男性間の親密な関係が違法(1885年から続いた)であった時代のゲイカップルが登場し、そこにアーカイヴ資料が織り込まれます。浮かび上がるのは、当時のゲイ男性らが人知れず苦しんだ時間。法改正により同性愛が脱犯罪化されて50年後の2017年、それを祝い様々な作品や催しがイギリスで行われ、本作も発表されました。本作では、映像化されず幻となっていた脚本「彼の髪の色」をもとにした劇映画とアーカイブ化されているニュース映像や個人的な記録などが織り込まれています。冒頭で言及される1954年の「モンタギュー事件」とは、モンタギュー卿が男性に性行為を扇動したとして逮捕され有罪判決を受けたことを指します。これをきっかけにイギリス市民は、この法律に異議を表明し始め、政府は調査委員会を設置しました。

全編日本語字幕付きで観やすい。

街の明かり、仲間、自由が田舎にはない。ゲイの二人は都会で暮らす。

実際のモンタギュー卿の映像とドラマの映像が交互に映し出される。

当時は、ホモは犯罪行為とされ、ホモ狩りとして、恐喝・脅迫状・金の要求が当たり前な時代。同性愛者にとっては辛い時代であり、自殺者が絶えなかった、背後を気にして過ごす日々、ラブレターも燃やす、と当事者たちの苦しみが伝わってくる。

不気味な高音とともに不穏な二人の会話が展開される。舞台として描かれるのは、本棚と机のある1室のみ。

仕事終わりに、自分たちの性対象のことを認めて欲しいと声を上げるために活動する人たちの気持ちを考えてみる。働いてきて家で好きな人と寛いだり、自分のことを考えたりする、その当たり前の時間すらないのである。資料をかき集めて、自分のセクシュアリティのことを隠さずに伝える文章を用意したりと、そんな時間を想像してみる。外に出たら、後ろ指を刺され、自分の存在意義がいつだって揺れ動く、そんな日々。

常に何かに怯える人たちのシンパシーを私自身は感じとるのだろうか。苛立ち、焦り、恐れ、小さな空間に二人。二人が思い悩むのは、二人だけの暮らしではない。周りの人間をも巻き込むかもしれない、他人や家族への思いにある。

印象に残った言葉は、歴史上のアーカイブは一部だということ。

それは、発言をしていた人のものだけである、ということだった。つまり、声をあげられなかった人たちがほとんどで、アクセスできない人々の声を知るための努力をすべきなんだと。歴史はそんなに単純ではない、人の人生と同じく複雑性を持っている。生きてきたすべての人間が活動者であったわけではない。